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「意識」の概観

前回まで生物の概観をまとめました。無生物から生物への成り立ちが書かれていましたが、次の興味として、生物からどう人間が進化したのかに興味がいくようになりました。今回は通常の生物と人間との差があると思われる脳の作りや、意識の問題についてまとめます。この領域は学べば学ぶほど、扱われている学問の広さに驚き、『意識』というテーマを通じて様々な学問に触れることができることを学びました。


意識研究の多様性

Wikipediaでも述べられていますが、『意識』を扱う学問は広く、アプローチ方法も異なります。 生物学的プローチでは例えば動物と人間との対比や進化論で語られることがあります。 医学的アプローチでは脳の構造や、神経細胞のミクロの視点、NCC(Neural correlates of consciousness)など、 哲学的アプローチでは心体二元論など、 物理学的アプローチでは複雑系・力学系などを用いた構成論、ALIFEなど、 一つ一つ研究しても一生尽くすような内容のものがあります。 ただ意識の問題は実に難しく感じます。その理由についても様々な本で書かれていますが、『意識』に対する明確な定義を定められないことにあると思います。 自明なことですが、「その人に意識があるかないかは、その本人しかわからないこと」、「自分に意識があるかないかは、意識がある時にしか判断できないこと」があると思います。 意識の定義があやふやなまま、なんとか「意識がある」ことに対する必要十分条件を探求することになりますが、そのような中で先人たちが進めた研究は非常に興味深いです。


意識の特徴

まずは生物学的なアプローチからです。「意識の神秘を暴く」という本では意識の特徴を列挙し、動物の意識や進化について述べられています。

意識を3つのパートにわけて論じています。 外受容意識:感覚の心的イメージ、 情感意識:気持ちいいなどといった内的な気持ち、 内受容意識:その中間という3つのドメインがあり、 それぞれが重複しています。

また意識についての主観的特性として、 参照性・心的統一性・心的因果・クオリアの4つがあげられています。

また特に情感意識があることを示す行動基準として、 大域的オペラント条件付け 行動のトレードオフ、勝ちに基づく費用対効果の決定 欲求不満行動 鎮痛剤や報酬の自己供給 強化薬剤への接近や条件的場所選考 の5つがあげられています。

それらの特性は、情感がないと通常考えられないような行動をする基準であり、それらの特性を確認することでその動物に情感があるかないかをみる実験が行われています。

その結果、脊椎動物、節足動物、軟体動物(のうちイカタコなど)は上記の行動基準を満たすことが確認できたそうです。上記の動物の実験から進化論と絡め、進化においてカンブリア爆発の間の段階で意識をもつ動物が生まれたと考察しています。

私の解釈によれば、「意識をもつ」ならば先ほどの5つの行動基準は満たすことは経験上自分自身でも確認できますが、5つの行動基準を満たすならば、意識を持つという逆の命題は非自明ではないかと考えています。動物との比較によりここまで意識についてわかってきていると驚きつつも、意識を持つ状態とは何かがまだ明確にはわからない印象を持ちました。


NCC

次は医学的なアプローチです。脳の意識 機械の意識という本では、特にクオリアに着目し、両眼視野闘争(視覚入力があるのにクオリアが発生しない状況)の実験をベースに脳の中の意識を司るところ(NCC)を割り出そうという取り組みが紹介されています。 視覚情報が、ニューラルネットによって徐々に次元圧縮され、視覚情報の抽象度が上がり、最終的にNCCにたどり着くような脳構造を割り出そうとしています。

情報統合理論

続けて医学的なアプローチの例ですが、「意識はいつ生まれるのか 脳の謎に挑む統合情報理論」という本では、昏睡状態や植物状態の患者に関する例や、夢や睡眠の例を踏まえて、意識に対する公理を作ろうとしたアプローチが紹介されています。 第一公理:意識の経験は豊富な情報量に支えらている。 第二公理:意識の経験は、統合されたものである。 上記の2つを合わせ以下の命題が作られ、それを情報統合理論と呼びます。 「ある身体システムは、情報を統合する能力があれば、意識がある。」

この本ではさらに、一歩進んで、上記の能力を定量的に図るための指標として、Φ(ファイ)という単位を導入し、具体的にネットワークで組まれたニューロンがどの程度のΦなのかを具体的に計測し、計算をすることで意識がどの程度あるかをTMS脳波計を使って実験で図る取り組みを行なっています。こちらの実験により意識がある覚醒時と、夢を見ていない睡眠時の区別ができるとのことです。

上記のリンクで金井先生が情報統合理論の話と合わせて、情報生成理論というものも紹介されています。

知性と意識の関係

現在人工知能ブームに伴い、強いAIに関して多くの議論がなされています。茂木先生の「クオリアと人工意識」では知性と意識の関連性・依存性について丁寧に述べられています。汎用的な人工知能が、圧倒的な知性が身についた際に意識が身につくのかについて述べられています。

また「汎用人工知能プラットフォームとしての人工意識」という論文では具体的な汎用人工知能の実現方法について3つほど述べられ、それらの実現方法と意識の関連性について述べられています。 特にそのうちの一つSolution by Simulationでは近年AI研究でも進められている世界モデルとも関連があると述べられています。

またSolution by Simulationは上記で述べた情報生成理論によって意識が生まれることを示唆しています。

最後に

意識に関する研究は多岐に渡ります。それらを俯瞰し、統合して見られるようになりたいと思っています。次回以降では複雑系や構成論的アプローチによる意識研究をまとめたいと思っています。

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